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このばあいでも同母の〈兄弟〉どうしは〈母〉 または遠縁の母たちが死んだとき〈対幻想〉としてはまったく解体するほかはない。 解体した後にこの〈兄弟〉たちはどこへゆくのだろうか? 可能性はただひとつ〈母〉または遠縁の〈母〉たちとは関係のない母と同…
ところでこの継起の目標は〔精神の〕深底が顕示されるという啓示であるが、この深底とは〔精神の〕絶対的な概念のことであり、右の啓示はまた精神の深底を止揚することであり、言いかえると、精神を広げることであり、精神に広がりを与えることであり、この…
さて、ブナルア家族から二つの典型的集団の一つ、即ち同母の姉妹及び遠縁(即ち同母の姉妹から派生した第一、第二、或はそれ以上の等親)の姉妹を、彼女等の子供たちと共に、同母の兄弟及び更に遠縁の母方の兄弟(我々の前提によれば、これは彼女等の夫でない)…
〈母系〉制はただなんらかの理由で、部落内の男女の〈対なる幻想〉が共同幻想と同致しえたときにだけ成立するといえるだけである。 このなんらかの理由は、たとえば女性が定住した居の周辺で食用になる植物をさがしたり、育てたりしながら育児にたずさわり、…
〈人間の生誕〉の問題がけっして安直でないのは、人間の〈死〉の問題が安直でないのとおなじである。しかも〈死〉では、ただ喪失の過程であらわれるにすぎなかった対幻想の問題が、〈生誕〉では、本質的な意味で登場してくる。ここでは〈共同幻想〉が、社会…
或る日、彼女が我々無産階級に到底ありうべからざる陰謀を企てゝゐたのを、偶然の機会から発見した。 彼女は、三日もつゞけさまに、朝の味噌汁にキャベツを使つて俺を苦しめたのである。 それは何かの復讐であつたかも知れない。 彼女は百姓の育ちであつたの…
「合一した二重の自然」としてのファウストが救済されるためには、もちろん、をもたらす高次の存在がなければならない。それは天使たちによって「上からの愛」あるいは「永遠の愛」と呼ばれており、ゲーテにとってこの永遠の愛こそ神にほかならない。かれが…
内田は本書のなかで、安倍晋三首相と現在の天皇(明仁)を対比した上で、後者に或る優位を読んでいる。即ち、天皇は「霊的エネルギー」なるものにおいて安倍をしのいでいる、 なぜそういえるかといえば、安倍は「自分の血縁者だけを選択的に死者として背負う…
姦通の現場を抑えられた女がいた。その女の愛の物語は伝わっていないが、しかしその愛はたいへんすばらしいものだったにちがいない。というのは女の罪は、悔い改めたからではなく、その愛がいかにもはげしいすばらしいものだったから、許されたのだ、とイエ…
つい、「世界不思議なんとか」のエジプトでお棺発掘の番組を見てしまったが、――日本人は社会科で、エジプト文明と縄文式土器だけ4月に一生懸命勉強しすぎて、ギリシャとか大化の改新あたりまでで息切れしている。エジプトのお面には興味津々なのに、近所の石…
懐疑派とは器用に、感受性のカタログの作れる男だ。それだけだ。 立派な芸術は必ず何等かの形式ですばらしい肉感性を持っている。 人間は現実を創る事は出来ない。ただ見るのだ、夜夢を見る様に。人間は生命を創る事は出来ない。ただ見るのだ、錯覚を以て。 …
ドン・キホーテという男を頭に描く事は出来るであろうが、ポーの書いたリジアという女を想像する事は出来ないだろう。ストリンドベルヒの舞台にはラネーフスカヤ夫人の代りに、エドガーという幽霊が出る。処で君は人間を描こうとするのか?よろしい、描いて…
「おい、脅(おど)かしっこなしだ。なに事だね、一体それは……」「つまり君の人相だ。実に千万億人に一人有るか無しの奇相である。それによると、君はわれわれが今見ている現実世界の住人ではない」「えっ、なんだって、少しもわけがわからない」「わからな…
明確な色彩だ。自然がこの位明確に単純に色どられる事は稀れだ。牛と荷物と一緒に船に帰る。夕食を食い損う。パンを一と片れとコーヒーで我慢する。出頭君は買って来た金平糖を抱えて、これがあれば飯なんかいらぬという。舐めれば、砂糖会社の区別も解ると…
礼拝する時、集会にいる時、読書する時、あるいは筋肉を休ませる時には常に、突然例の気分の接近を感じた。(中略)これは、時間、空間、感覚を漸次また急速に消し去りゆくところに存し、また同状態は、自我と称したいものに性質を附するらしい幾多の経験能力…
バンテリンドームはでかすぎてホームらんが出にくいとみんな言っていたが、大谷や鈴木はかるくホームラン打っていました。
「そんな弱い事をおっしゃっちゃいけませんよ。今に癒(なお)ったら東京へ遊びにいらっしゃるはずじゃありませんか。お母さんといっしょに。今度いらっしゃるときっと吃驚(びっくり)しますよ、変っているんで。電車の新しい線路だけでも大変増(ふ)えて…
幸子の臍はその後だんだん堅まっていった。初め彼の見た時には、腹部を漸く包んだ皮膚の端を大きくひねって無雑作にまるめ込んだだけのように見えた。そして、彼女が泣く時臍は急に飛び出て腹全体が臍を頭としたヘルメットのような形になってごぼごぼ音を立…
當時は何でも辯證法の時代だつた。その辯證法の時代が、私には我慢できない氣持のいらいらだつた。私は、イロニーといふことばでものを考へた時代が、ドイツの十九世紀初頭青年たちのわかい時代の怒濤期にあつたことを思ひ起した。それが少しいぢくられてイ…
そこには僕の知らない穴でもあいてゐたのでせう。僕は滑かな河童の背中にやつと指先がさはつたと思ふと、忽ち深い闇の中へまつ逆さまに転げ落ちました。 ――「河童」 小林秀雄は、芥川龍之介に音楽が鳴っていないことを知っていた。 何故、死は最上の友なのか…
ほかのものはどうでもいい、まあとにかく俺をみてくれ、と作家たちは要求する。しかし、作家の詠嘆や、自己暴露や、特異な感受性の露出をみているかぎり、われわれはひろい 「現実」の展望をあたえられることは絶対にない。木をみていれば山はみえない。そし…
モオツァルトのかなしさは疾走する。涙は追いつけない。涙の裡に玩弄するには美しすぎる。空の青きや海の匂いの様に、「万葉」の歌人が、その使用法をよく知っていた「かなし」という言葉の様にかなしい。こんなアレグロを書いた音楽家は、モオツアルトの後…
新たな嘘が積み重ねられ、一般的な意味はそのあとを追いつづけざるをえず、悪循環はどこまでも終わらない。だからこそ、いまもっとも必要なのは意味の手前への前進なのではないか。悪循環から脱出するには、恣意的な意味に対して一般的な意味で切り返すので…
三遊亭喜楽の落語は、卓一も数回きいた覚えがあつた。芸の本質を遠く逃した邪道の人と信じてゐたので、その名前には、ただ軽蔑がついて廻るにすぎなかつた。「あの人が、女と心中のつもりで、佐渡へ渡らうとしたことがあつたのです。僕に会はず、新潟を素通…
日本の選挙は当分ボス退治が第一だと私は思うね。ボスと共産党は思想に対して暴力的であり、利益に対して策略的で超理論超党派的である点で、同じような存在だ。政党などということよりも、先ずボス退治である。ボスさえ居なければ、何党が政治をやっても、…
彼自ら知らぬ処に、彼が本当によく知り、よく信じた詩魂が動いていたのであって、「平家」が多くの作者達の手により、或は読者等の手によって合作され、而も誤らなかった所以もそこにある。「平家」の真正な原本を求める学者の努力は結構だが、俗本を駆逐し…
その頃から久米は天性の才気とその野次性と茶気との為に、教室でなくてはならぬ愛嬌者になつてしまつて居た。 久米の教室に於ける機智や頓才は幾度我々を欣ばしたか分らないが、今迄も忘れないのは独逸(ドイツ)語の時間に久米が独逸(ドイツ)語の何とか云…
父と母が、「國語」の時間には中国語を教わっていたように、日本の小学校に通うわたしは、「国語」の時間に日本語を教わった。台湾で育っていたのなら外国語であったはずのそのコトバの読み書きを、「国語」の時間で身につけた。 わたしの日本語は、わたしの…
「からだは宿に、魂は先々につき添ひて、人こそ知らね幻のたはぶれ、ことさら平和泉高館の旧跡一見したまひて、光堂の宿坊に一夜を明かしたまふ。旅夜着の下にこがれて、物いはぬ契りをこめ、左の袂に伽羅の割欠けを入れ置きしが、それは」と問へば、「いか…
落第は奨励すべきものではない。一体、皆が落第してしまったら、学校の方では、学生がいなくなって困るであろう。それにこの頃のように、経済事情がどこの家庭でも苦しくなっている場合は、落第などせずに早く卒業した方が、両親のためにはよい。だから私は…